遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~
第3章 運命の邂逅
「ああ、判ってる。だが、親父のことも心配だが、俺はお前のことも案じられてならねえ。お前は世の中の醜さも男ってえものの卑怯さも、何も判っちゃいねえんだ。危なかしくって見てられない。良いか、俺のこの言葉だけは忘れるな。あの男だけは止せ。俺は、あいつを見たときから、胸騒ぎがしてならねえんだ。あんな、いかにも女にモテそうな両班の坊ちゃんなんぞがお前のような貧乏人の娘を本気で相手にするはずがない。だから、あの男のことを今日を限りに忘れるんだ」
「―判ったわ。そんなに言わなくても、大丈夫よ。私とあの方が生きる場所が違うのは最初からちゃんと心得てるから」
梨花は哀しげに言うと、逃げるように家を出た。
「―判ったわ。そんなに言わなくても、大丈夫よ。私とあの方が生きる場所が違うのは最初からちゃんと心得てるから」
梨花は哀しげに言うと、逃げるように家を出た。