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遠い約束~海棠花【ヘダンファ】~

第3章 運命の邂逅

 他人が聞けば、嗤うだろう。単なる醜い嫉妬だと言われるのがオチだ。それほどに、根拠のない判断材料にすぎなかった。
 不幸な宿命を背負っているといえば、梨花自身も同じだ。世が世なら両班の令嬢として何不自由なく暮らせただろうに、何の因果か、こうして名を変え庶民の娘として生きている。もしかしたら、あの男と梨花の背負った暗い宿命が互いに呼び合い、二人を惹きつけ合っているのかもしれない。
 あの男に惹かれているのは梨花だけではない。男の方もまた梨花に惹かれているのは明らかだ。同じ男として、同じ女に惹かれる者として、傍で見ていれば判る。
 もしかしたら、あの二人はひとめ惚れというヤツだったのかもしれない。ひとめ見た瞬間、恋に落ちる―、ソルグク自身、十年前に橋の上で倒れている幼い梨花を見た刹那、恋に落ちたのだ。ひとめ惚れを馬鹿げている、一時の感傷だと笑うつもりはない。

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