雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】
第1章 LessonⅠ 憂鬱な夜には
LessonⅠ 憂鬱な夜には
輝(ひかる)は思いきり盛大な溜息をついた。もう、これで何度目になるか判らない。しかし、そうでもしなければ、到底、精神のバランスを保っていられそうになかったからだ。
一週間ほど前、同じ総務部の後輩藤堂美奈子が訳知り顔でそっと耳打ちした例の科白が今こそありありと甦る。
―先輩、この間の日曜の午後、営業の長瀬先輩が同じ部署の三森(みつもり)さんとN駅前を歩いてましたよ。ホント、肩なんかぴったりとくっついっちゃって、誰が見ても恋人にしか見えないほど―。
そこで、美奈子の滔々としたお喋りは突然、止まった。輝の形相がいつもにもましてきつくなっていたからだ。
輝(ひかる)は思いきり盛大な溜息をついた。もう、これで何度目になるか判らない。しかし、そうでもしなければ、到底、精神のバランスを保っていられそうになかったからだ。
一週間ほど前、同じ総務部の後輩藤堂美奈子が訳知り顔でそっと耳打ちした例の科白が今こそありありと甦る。
―先輩、この間の日曜の午後、営業の長瀬先輩が同じ部署の三森(みつもり)さんとN駅前を歩いてましたよ。ホント、肩なんかぴったりとくっついっちゃって、誰が見ても恋人にしか見えないほど―。
そこで、美奈子の滔々としたお喋りは突然、止まった。輝の形相がいつもにもましてきつくなっていたからだ。