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雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】

第1章 LessonⅠ 憂鬱な夜には

 まあ、このことで、またしても〝本間の局〟の怖ろしさと陰険さが社内中で取り沙汰されるだろうが、そんなのは意に介したことではない。いつの世でも可愛くて若い子はちやほや大切にされ、ブスで眼がねのオールドミスには厳しい眼を向けられる。
 それが、哀しいかな、現実だ。
 輝の記憶は更に遡っていった。人生三十一年の中でも、バレンタインチョコ事件に次ぐ、屈辱といえば、やはり、あれ以外にはない。
 高校二年の夏休み、父方の従兄の裕太とN駅前に行くためにバスに乗っていたときのこと。その日、亡くなって久しい祖母の法事が自宅で行われた。血縁といっても近い者たちだけでごく内輪に行ったので、集まったのは父の妹―つまり、叔母夫婦とその息子である裕太だけだった。

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