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雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】

第3章 LessonⅢ 悪意ある噂

「はっ、はい?」
 声はかなり焦っていて、先刻より更に切迫した感じだ。
 輝はつかつかと近寄ると、岩田の顔を意味深に覗き込んだ。
「ネクタイが、曲がってる。月曜の朝は副社長自らがチェックするときもあるから、十分気をつけてね」
「は、はいっ」
 〝もう、行って良いれすか〟と、岩田はゾンビに遭遇した弱者のように震えながら言った。哀しいかな、呂律が怪しくなっている。
 輝は更に一呼吸置いた。相手の恐怖と緊張を増すために効果的な時間を計っていたのだ。
「それから」
 輝は更に岩田の顔に顔を近づけた。

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