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雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】

第5章 LessonⅤ キャッツ・アイにて~孤独なピアノ~

 もしかして、今、自分は何かいけないことを口にしたのだろうか? 彼を怒らせるようなこと、もしくは負担になるようなことを?
「聡さん、私、何か―」
 言いかけた時、聡が泣き笑いのような表情で言った。
「俺も幸せだよ、輝さん。俺なんかと一緒に過ごすイブの夜をそこまで歓んで貰える女と出逢えた―そのことをとても幸せだと思う」
 聡の瞳が揺れているように見えるのは、気のせい? もしかして、彼は今、泣いている―?
「宝石箱で思い出したよ。クリスマスの夜にはやっぱり、これがなきゃ」
 聡が愛用のダウンコートのポケットに手を突っ込んだ。何やら探していたかと思うと、大きな手のひらを差し出してくる。
 彼の手の上には、不似合いなほど小さな箱が乗っていた。

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