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雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】

第2章 LessonⅡ 心ときめく記念日

「結構ショックでした。女房がそんなことを考えてるなんて、ちっとも気づきもしないで、脱サラした途端、もう、ついていけないわ、あなたの気まぐれにはこりごりってね」
 そのときだけ、吉瀬の顔が酷く哀しげに歪んだ。
 もしかしたら、吉瀬さんはまだ別れた奥さんを愛しているの? そう思った瞬間、何故かまた胸がツキリと痛む。
「脱サラ―。でも、吉瀬さんは何か本業をなさっていて、その傍らカメラマンもしているって」
 そういう話だったはずだ。サラリーマンではないのだろうか。
 踏み込みすぎる質問だとは判っていた。大体、今日が初対面で、しかも顧客と撮影を依頼したカメラマンという関係にすぎないのに、ここまで私生活に立ち入る権利も資格もないはずだ。

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