359°
第5章 甘い香りとしょっぱいキス
着いた先は、こないだのスタジオだった。
「順平、騙しやがったな!」
「いや、アドバイスしてほしいのはホント。龍さんたちと練習するって言ったら、来てくんないと思って」
「それなら菅生さんたちにアドバイスしてもらえばいいだろ!」
「いやいや、いいじゃん。少しくらい付き合ってよ、ね?」
「…っ」
オレは渋々頷いた。
だけど正直…、
彼らの演奏がまた聴けるのが嬉しかった。
扉を開けると、見慣れた顔が並んでいた。
サラリーマンの兄ちゃんも蒼士もチラッとこっちを見るが、話しかけてはこない。
「そこ座ってていいから」
順平に言われ、オレたちは端っこで椅子に座った。