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第7章 芽生えた感情と嫉妬
「まぁ、そんなに尻込みすんなよ…っても、ボーカルはバンドの顔だからな。卓には頑張ってもらわねぇとな」
菅生さんがニカッと笑った。
「…てことで、今日どんな唄い方してたか見てみようか♪」
菅生さんがそう言うと、高藤さんが鞄からノートパソコンを取り出した。
「やっぱり…見るんですね…」
「たりめーだろ。これからのために自分がどんなふうに唄ってんのか、自分の目で確かめてみねぇとな」
「…」
オレたちはテーブルの上を少し片付けて、一カ所に集まってパソコン画面を見つめた。
慣れた手つきで、高藤さんが指を動かす。
「そういえば高藤さんは、どんな仕事してんですか?」
ふと疑問に思い、質問してみた。
「IT関連の仕事だよ、派遣だけどね」
「へぇ…」
一瞬スーツを着てバリバリと働く高藤さんの姿が浮かんだ。
「社員にはならないんですか?」
「社員になったら、思うようにバンド活動できないからね。転勤もあるだろうし…」
「そうなんだ…」
バンド活動のために、仕事も選んでるんだな…。すげぇよ…。
オレも将来のこと考えないとな…
…って、あれ?
高藤さんはプロ目指してんだっけ?
てことは必然的にオレの将来は、
プロのミュージシャン…?