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第7章 芽生えた感情と嫉妬
俺は…嫉妬しているのか?
彼女に。
思ってもみなかった感情に自分で驚く。
卓也が誰を好きになろうが、それは卓也の自由だ。
女の子と付き合うのは自然なこと。
この先、卓也が俺を好きになることはまずないだろう。
俺が動かない限り…。
こないだのキスも気付かれてはないようだ。
あえて、いばらの道を進む方を選ばなくていい。
卓也には普通に幸せになってほしい。
そう思うのに…
なぜ嫉妬してしまうんだろう…。
俺は卓也の声だけで十分なのに。
一緒に音楽をやっていくだけで幸せなのに。
独占欲…
俺の頭の中に、その言葉が浮かんだ。
「…」
その時ふっと、あるメロディーが頭の中に飛び込んできた。
俺はそのメロディーを忘れてしまわないよう、頭の中で繰り返し再生する。
「どうした?拓哉」
微動だにしない俺に、龍が声をかける。
俺は返事もせず立ち上がり、龍たちの横を通り過ぎた。
このメロディーは逃したくない。
その思いのまま、俺はその場を後にした。