
359°
第7章 芽生えた感情と嫉妬
「待って!ね、取引しない?」
「あ?」
女は携帯を持ちながら髪をかき上げ、俺を見上げる。
…やっぱりどこかで見たことある…
「…取引?」
「うん。マサは、拓哉さんのことが好きなんでしょ?」
「! なんであいつの名前を知ってんだ?」
「私、何でも知ってるよ。だって坂本卓也の彼女だもん」
「……なんだって?」
坂本卓也…
REAL AND GLAYの新ボーカル…
「あ…」
思い出した。
この女…
アリスの森で卓也の隣にいた…
「女の勘なんだけどね、拓哉さん…坂本くんのこと好きみたいな感じなんだよね」
「…」
「だからハッキリ言って邪魔なんだよね…」
「…」
「坂本くんのことは応援してるけど、あの人は嫌い」
「…それで、俺にどうしろと」
女はクスッと笑った。
「簡単、あの2人を引き離せばいいの」
「!」
「私は別に坂本くんに有名になってほしいわけじゃないし、バンドなんてどうでもいい。でも坂本くんは、拓哉さんに感化されつつある。だから拓哉さんさえ居なくなれば…」
「俺が拓哉をデュランに引き抜けばいいってことか」
「…そういうこと。こっちの情報は逐一流すから、協力すればうまくいくかも?」
「…それは無理だな」
俺は苦笑した。
