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第7章 芽生えた感情と嫉妬



「おい、歩けるか?」


「…ん…」



まだ意識がはっきりしてない卓也の身体を支えながら、俺は男子トイレに入って行った。



便器が2つある。
俺と卓也は並んで用を足す。



「…そういえばお前と初めて会ったのもトイレだったよな」


「…うん…」


「お前、完全俺にびびってただろ」


「…うん…」



虚ろな返事しかしない卓也を心配して、俺は隣を振り返った。
卓也はボーッとしながら用を足している。



「…おい、大丈夫か?」


「…大丈…夫…」



そう言うと卓也は、ボーッとしたまま洗面所に向かった。



参ったな…
ここまで酔うとは…ちょっと調子に乗りすぎたかな…



俺は少し反省しながら手を洗う。




…だけど酔うとこんなに素直になるなんて…




俺は卓也をチラリと見た。
卓也は相変わらず虚ろな目をしたまま、手を洗っている。
シャツの袖が、水に濡れていた。



「…袖捲らねぇと」



そう言って俺は卓也の背後に立ち、片腕ずつ袖を捲った。



「…」



卓也の匂いがする。



その匂いに誘われて、俺は卓也を後ろから抱きしめた。





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