
359°
第7章 芽生えた感情と嫉妬
「おい、歩けるか?」
「…ん…」
まだ意識がはっきりしてない卓也の身体を支えながら、俺は男子トイレに入って行った。
便器が2つある。
俺と卓也は並んで用を足す。
「…そういえばお前と初めて会ったのもトイレだったよな」
「…うん…」
「お前、完全俺にびびってただろ」
「…うん…」
虚ろな返事しかしない卓也を心配して、俺は隣を振り返った。
卓也はボーッとしながら用を足している。
「…おい、大丈夫か?」
「…大丈…夫…」
そう言うと卓也は、ボーッとしたまま洗面所に向かった。
参ったな…
ここまで酔うとは…ちょっと調子に乗りすぎたかな…
俺は少し反省しながら手を洗う。
…だけど酔うとこんなに素直になるなんて…
俺は卓也をチラリと見た。
卓也は相変わらず虚ろな目をしたまま、手を洗っている。
シャツの袖が、水に濡れていた。
「…袖捲らねぇと」
そう言って俺は卓也の背後に立ち、片腕ずつ袖を捲った。
「…」
卓也の匂いがする。
その匂いに誘われて、俺は卓也を後ろから抱きしめた。
