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キレーな顔した狼さん。

第15章 12匹目

「はい、そうですね。
…でも…その前に…

…先輩、口に……白いの。付いてますよ?」

「へ…へっ!?」

「歯磨き粉…ですかね?」

焦る俺を見て、黒い笑みを浮かべながら言う瑠樹。

普通、歯磨き粉の事を"白いの"なんて
言うか?

…それとも俺の考えすぎ?

何かコイツが言うと
全部、妖しく聞こえんだよな…

「あ、ありがと。
ちょっと拭いてくるわ」

少し動揺しながら瑠樹に言うと、
俺はまた洗面所に向かった。

あーもー、最悪だ。

この年になって、口に歯磨き粉ついてるって……

ガキか俺はっ!

急いでたのバレバレ。
ちょー恥ずい。

ティッシュで口を吹きながら
瑠樹のとこへ何となく行きづらくなってしまった俺。

ふと視線を上げると、歯磨き粉の入れ物が目にはいる。

そーいえば、この歯磨き粉……

旨かったよな?

歯磨き粉を"ウマイ"と表現しても
いいものなのかは解らないが、

この歯磨き粉の甘酸っぱさと歯磨き粉特有のスースー感がなかなかで…

俺的には、けっこう好きな味だったわけだ。

…何の味なんだ?

ちょっとした疑問が生まれたため、
俺はもう無くなりかけている歯磨き粉を手に取ると、味を確認する。

……

………ん?

…何だこりゃ?

少なくとも俺は初めて見るその味に
そんな言葉しか浮かばない。

そこには…

──恋の味

そう書かれていた。

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