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キレーな顔した狼さん。

第15章 12匹目

─ガチャっ

「お待たせしましたぁー」

玄関のドアを、尚も不満気な声の充が開ける。

「あ、充くん?
おはよう。…どうしたの?不貞腐れて」

充の不満気な声に、敏感に反応を示す
訪問者。

…こ、この声は……

「わぁっ!瑠樹君だぁっ
おはよーーっ!
大丈夫っ。何でも無いよぉ」

…やっぱり。

もー来たのか?はえーな。

また、俺の予想は的中する。

でもこれは…きっとツイてるらしい今日じゃなくても多分わかるな…

…声が聞こえただけで瑠樹だと解るなんて…そんな事はねーからなっ!



訪問者が瑠樹だと解った瞬間、
さっきまでは不満気だったはずの充は
一瞬にして元気な声に変わる。

…そんなに瑠樹が好きなのか?

「そっか、それなら良いんだけど…
充くん、元気だしてね?」

「うん!ありがとうっ瑠樹君!」

「フフッ……いいえ。」

やめろ…止めるんだ瑠樹っ!
うちの可愛い弟をたぶらかすなっ!

「あ、汐里兄ちゃんだよね?」

そんな俺の事なんて知るはずもなく、
充の嬉しそうな声が聞こえてくる。

「うん…そーなんだけど……
汐里先輩、準備出来てるかな?」

「うーん…わかんないや…
ちょっと待ってて!」

「ありがとう」

ここまでの会話を聞いて思う。

瑠樹が話してるってだけで、
聞き流す事なくちゃんと聞いてる俺。

…それも無意識だから困るよな…。

「兄ちゃぁーーんっ。
瑠樹君来たけど、準備終わったー?」

玄関からそう俺に呼び掛ける充に、
「おー、今いく」とだけ答えて
急いで口をゆすいだ──

「うしっ、お待たせ。行くか」

学校の指定カバンとその中に、母さんがくれた土産も入れて、慌てた様子など見せずに玄関に居る瑠樹に言った。

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