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キレーな顔した狼さん。

第15章 12匹目

「フフッ…」

頭の上から、そんな瑠樹の微笑が聞こえたが…敢えて気付かないフリをして
そのまま学校へ歩き続けた。

──俺はすっかり忘れていた。

こんなに優しい風が、俺たちの事を
やさしく包んだりしたから。

こんなにも暖かい時が、
ゆっくりと俺たちを見つめてくれているような…気がしてたから…


瑠樹の…"あの"不自然な
言葉の意味を──────

「それじゃ、僕はこっちなんでっ」

「おー…
また、帰りな。」

「はい。あっ…
いや…今日は帰れないかもしれましせん。……スミマセン」

校舎前。

1年生と2年生の玄関が別々なため、
いつもの様に帰りの約束をして別れようとした俺に、

瑠樹は申し訳なさそうにこう告げた。

「あっ…そーなんだ…
りょーかい。」

断られた事なんて今まで無かった。

もう瑠樹と帰るのが
"当たり前"のような感じがしてた俺は、素直に驚いたし、ショックだった。

でも、そんなのは俺のわがままに過ぎない。

用事があるのに、無理に付き合わせる訳にはいかないし…

「んーと…それなら、お昼だな。
お昼は大丈夫か?」

また断られたら…

なんて不安がよぎったが、
思いきって言ってみる。

「…っ」

俺の言葉に、大きく目を見開いて、
固まる瑠樹。

「やっぱり……無理か?」

自嘲気味に笑ってそう言う俺に
瑠樹は慌てた様子で言う。

「いやっ、違くてっ!
汐里からそんな事言ってくんの珍しいかったから!…その、嬉しくて…」

……

えっ!?///

頬をほんのりピンクに染めながら言う瑠樹を、俺も赤い顔で見つめた。

─ザワッ

その瞬間、周りが先程よりも
騒がしくなったように感じた。

「今……瑠樹君、口調変わって無かった?」「うん…それに、汐里先輩の事…汐里って…」

うわっ、やばっ!


瑠樹…今、素だったもんな!

周りの女子達の会話が聞こえ、動揺して瑠樹をみた。

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