美人妻は性欲旺盛っ!
第8章 アルバイト
ゆきくんは
サオリさんのコトを話し始めた
「うちの父はさ
父親であると同時に立派な医師で
子供だった俺と沙緒里は
そんな父に憧れてた」
「うん」
「特に沙緒里は
小さい頃から医者を目指して
ずっと努力してきた
両親もそれを期待した
憧れの父に追いつくために
血のにじむような情熱を注いだ」
そこから先を
ゆきくんは僅かに躊躇った
「けど狭き門は
あいつの熱意なんて
まるでなかった事のように拒んだ
華々しい高校受験で
沙緒里は失敗し、夢を諦め
駄目になった」
私は心のどこかで
サオリさんは
なんでもできる人なんだと
思っていた
「たった一度の挫折だ
けど親の期待が
重荷だったんだろうなぁ…
ガキの頃から積み上げてきたものの
大きさに押し潰されて
立てなくなっちまったんだ」
「どうなったの?」
「沙緒里は何もかも突き放すし
どうしようもなかった両親は
あいつと距離を置いた
多分だけど
信じてたんだろうな
自力で立ち上がるって…
美しい信頼関係だよ
さあ右京、この先
うちの家族はどうなったと思う?」
そんな言われ方をして
背筋がひやっとした
大団円じゃないんだ…
「沙緒里のバカはグレて
両親は娘に愛想を尽かして
息子だけ溺愛するようになり
あっという間に家族は冷戦状態
家庭はバラバラになった」
「ゆきくんは…?」
「俺は挫折直後も
グレたあとも
ずっとあいつに構ったよ
そばにいたし
家に帰らない日も迎えに行ったし
むかつくから普通に殴ったし
あいつのよくわからない理屈に
何度も反応してやった
俺は俺を止める両親より
自分のコトより
姉の沙緒里を選んだ」