美人妻は性欲旺盛っ!
第23章 ひとりの戦い
同僚の人は私に気づいた
けれど何か、複雑そうな顔で唇を引き結んで私から目を逸らした
…?
いや、今はそれより
私は小走りで近寄って、目線を上げ下げしながらゆきくんを窺った
「あの、あのね
迷惑かと思ったんだけど
待ってたの
ちょっとでいいから話――」
スッ…
これだけの距離
気づいてないはずがない
ゆきくんは私を見る事もせず、知らない人間であるかように素通りして行ってしまった
――えっ…?
「ま、待って!」
何かの間違いだ
間違いだと思いたかった
私に誓いを囁いてくれた人が
私に愛情を注いでくれた人が
私は走って、後ろからゆきくんの空いている側の腕に飛び込み、混乱した頭でその手を取った
「待って、お願い
行かないで!
私の話を聞いて!
ちゃんと全部説明するから…
だから、お願い…
顔も見たくないのはわかるけど
このままじゃいけないよ…
ね、話そ…?」
久しぶりに触ったゆきくんの手は少し細く感じた
不謹慎だけど温かくて私は本当にこの手が大好きだと伝わるように、ぎゅうっと強く握りしめた
パッと振り払われた
私は何をされたかもわからず、ただ呆然と見えなくなっていくゆきくんの姿を見送っていた
追いかけなきゃと頭では思うのに体が動かない
拒まれた反動が大きすぎて、私の体は急速に不良品になっていく
へたり込むまで
そう時間はかからなかった