美人妻は性欲旺盛っ!
第23章 ひとりの戦い
早朝、出社してきた石田は偶然のその場に居合わせた
(あれは…)
ゆきの視界に入ろうと
妻の右京が両手を広げて
真っ正面に立っていた
(ほ、ホントにいる…
まさか…
しかも今度は、朝…)
石田はギクリとする
女性にはことさら優しいあのゆきが睨んでいる
刺し殺すような視線
無機質で鋭く、冷たい目
すごいのは右京だ
それらを一身に受けても、一歩も引く事なく進路を妨害している
石田はどうしていいのかわからなくて立ち尽くした
ゆきは歩いて互いに手が届きそうな距離まで近づく
大の大人でもビビりそうなゆきの鋭利な眼光で睨まれても、右京は手を広げたまま退かなかった
ゆきが怖すぎた
石田はまさか手をあげるつもりかと思い慌てて駆け出した
「どけよ」
「はい」
(っ?)
石田は唖然とした
右京は道を譲り、ゆきはさっさと行ってしまった
「あの…」
「はい?」
「自分、石田と言います
浅葉先輩から聞いてて
ぶっちゃけ事情知ってます」
「え、あ…
そ、そうなんですか
じゃあ私よく思われてませんね
あはは…」
あれから2日、石田は本当に信じられない思いだった
ゆきが言った通り、この女性は諦めてなかった
本当に道端で泣いていた女性と同一人物なのだろうかと思うくらい、石田には衝撃的だった
つい今し方だって
冷たくあしらわれて
石田自身は見ていないが
恐らくは昨日も…
「あの、今のはいったい…」
「あ、聞いてくださいよ!
ゆきくん口聞いてくれたんです!」
「……はぁ?」
「一歩前進です!
めっちゃ睨まれますけど
前に立ったらさすがに
私を見ざるを得ないだろうし
へへっ、嬉しいなぁ
それじゃあ石田さん、また!」
見えなくなる後ろ姿を見送り、石田は開いた口が塞がらなかった