美人妻は性欲旺盛っ!
第23章 ひとりの戦い
「なんなんですさっきの!」
石田はゆきに詰め寄る
「なんだ、見てたのか
ビビって逃げてくれなかったな
諦めの悪いやつだ」
ふと石田はゆきの手元に便箋がある事に気がついた
「手紙…ですか?」
「差出人は受付に渡し
受付から俺にそれが届いた
読んでみろ」
石田はまさかと思った
手紙には綺麗な字で一言
会いたいです
とだけ書いてあった
「………これ…」
「昨日からだから二通目だ」
「今時、こんな…」
ゆきは何も言わず
手紙を引き出しにしまった
二通目の手紙
これからあと
何通増えるのだろうか
「バカだなあいつは
こんな紙っ切れで俺の心が変わるとでも思ったのか」
「先輩…
無視したり威嚇したり
どうしてそこまで…」
「もう決めたんだ
100回右京をシカトする」
「100回…って正気ですか!
何ヶ月かかるか…!」
「平日一日2回
1ヶ月で40回
2ヶ月半で終わるよ」
さらりと言うゆき
本当にそんな事が可能なのか
今もこうして離婚の危機だと言うのにゆきの余裕に石田は驚愕する
ゆきは信じきっている
裏切られて傷つけられて
別居までしているのに
右京が決して諦めないと信じ、無視すると言っている
「ほ、本気ですか…?」
「どういう意味だよ」
「だってそれ…
向こうは知らないんでしょう!
途中で奥さんが諦めたら…!」
「俺は右京がいいけど
俺よりいい男はいっぱいいるよ
右京にはその権利がある」
あまりにも細いと思った
石田にはそんな綱渡りが成功するわけないと断言できる
なんにも知らされず
朝晩、会社に通い
冷たく無視され続ける
それを毎日繰り返す
女性にとってそんな酷な話があるかと思った
自分はただ待つだけ、いつ終わってしまうか死刑囚のように怯えて待つゆきにとっても酷であった