美人妻は性欲旺盛っ!
第27章 番外編2 望月翔吾
ちゃぷん…
翔吾が落ち着いたあと、沙緒里は自分の事を話し始めた
「わたしさ
医者になりたくてさぁ…」
父親が優れた医師で、娘の沙緒里は自分も父のように立派な医者になるんだと疑わなかった
あの頃の自分は夢と希望に満ち溢れて輝いていた
「必死に勉強したわ
超真面目ちゃんだった
勉強も全然苦痛じゃなくてね
親からも期待され
それに応える実力があった
未来を信じて疑わなかったわよ
失敗とか無縁だったから」
自嘲する響きがあり
翔吾は沙緒里を抱きしめた
「中学を卒業し
さあ新しい門出!
高校、大学!
まずは最高の高校!
わたしは医者になるの!
あらすってーん落ちちゃった」
当然合格よ?そう思って見た合格者の中に沙緒里の名はなかった
お留守だった足元から
がらがらと崩れていく感覚
初めて味わった挫折
うぬぼれていた天才の限界
たった一度の失敗が
沙緒里の肩に重くのしかかった
「熱意も期待も未来も
一気に色褪せちゃったわ
自分を存在意義を失っちゃった
なんかね、何もなかったの
わたしから勉強を取ったら
何もなかったのよ」
沙緒里の肩は軽かった
重圧に潰された
空っぽな人間
期待を裏切った自分
誰も責めない分
自分が責めて責めて
立ち上がれないほど強く
そうして沙緒里は
夢に、自分に、諦めた
「グレたわ」
「え?」
「学校にも行かなかった
家にも帰らなかった
合わせる顔ないし
がっかりな娘でしょ?
なんかもう全部どうでもよくなってフラフラ夜の街を遊んだわ」