
喘ぎ声レッスン*SS追加中*
第6章 そして何かは動き出す
「あたし、・・・」
彼女の気持ちは、自惚れていた訳ではない。そんな気がして涙が出そうな程嬉しい。
泣きそうな彼女に、すぐにでも『彼女になれ』って言いたい。言いたい、
プルルル…
一本の電話が、静けさを破った。俺は部屋から出て、通話ボタンを押した。
「優、元気か?俺だ」
親父だ。この声は紛れもない親父の声。
「約束の10年は確かあと3年残ってたな。だけど、その期間を短くしたい。」
「な、何でですか?俺、約束しましたよね?」
「実はな、俺はもうすぐ死ぬらしいよ。あはは、情けないなぁ…。今まで仕事の事しか頭になかった。
お前の事より、仕事だったよな。なのにお前にしか頼れないんだからな。」
寂しそうに笑う父の声が、俺の胸に突き刺さる。
でも一番によぎったのは、さっき梓ちゃんに告白しなくて良かった、という安堵感だけだ。
3年間は彼氏みたいに過ごせるかと思ってたけど、俺にはもう時間がないみたいだから。
