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雨の中の君へ。

第2章 仕事。

その畑山に、今朝別れを告げられた。

手切れ金の代わりに渡されたのは、彼の新作の原稿だった。

これは今に始まったことではない。彼に他に女がいることは分かっていたし、畑山が新しい女に会う度に、別れを切り出され、別れた。

わがままで、女にだらしのない、どうしようもない男。
…でも私は畑山を愛していた。

光井先輩が忠告するまでもなく、私はとうに畑山の餌食になっていたし、そんなドロドロした関係がもう6年目を迎えようとしているのだ。

地方に次回作の取材と言っては、私を連れ回す。海外にも行った。カメラマンやその他先生の身の回りを世話するお弟子さんとかも一緒だから、奥様に怪しまれることはなかった。けど、出た先では私を妻のように扱う。
わざと大部屋でみんなで寝るようにして、襖を隔て先生が私と寝るようなこともあった。

新幹線や飛行機のトイレですることもあった。

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