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雨の中の君へ。

第3章 彼。

ピンポーン

トモヤの玄関のインターホンを鳴らす。
順調に仕事を終え、当初の予定より早くなった。8時に終わるなんて何ヶ月ぶりだろう。そしてトモヤと会うのも何週間ぶりか…。トモヤが好きな銘柄のワインを買って行った。

「はーい、どーぞー♪」

家に入った瞬間とても美味しそうな香りがする。

サラダ、パスタ、ピザ…。

「相変わらずすごいね!」

「まー突然だったから凝った物はないけどね。チキンも焼いてるよ♪さ、どうぞ」

トモヤはシェフになりたいと思っていた時期があったというほどの料理の腕前だ。フォアグラのテリーヌ、とか時間さえあれば作れてしまう。ずっとパソコンとにらめっこしているから、料理は息抜きになるらしい。

「いただきます♪」

んーやっぱ…美味し…。

私がもくもくと食べている時は心底美味しい時だとトモヤは分かっているから、私が食べている様子を見て満足そうに微笑む。

胃袋をつかまれる、ってこういうことなんだろな、と思う。

「幸せそうに食べるよね♪」

ニコニコ微笑みながら、とにかく食べている私に言った。
…トモヤは陽だまりみたいな人だ。

「クリスマスみたい笑」

トモヤが持ってきたチキンはまさかの丸ごとで、思わずワインを噴き出すところだった。

「お誕生日だから♪」

一日遅れだけどね。…胸がチクンとする思いをワインで流す。

全ての料理をきれいに食べ終えると、ケーキが出てきた。

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