テキストサイズ

雨の中の君へ。

第3章 彼。

…先生は意地悪だ。さっきの現場がおそらく見えたであろう金谷さんに、私を車で送らせている。

気まずい沈黙の車内…。

「編集の仕事も大変ですよね。こんな夜中に。ってもう朝か…」

気まずい車内に一呼吸いれてくれたのは金谷さんだった。畑山先生のマネージャーを務めるだけあってさり気なく気を遣うのが上手だ。

「すみません…送っていただいて。金谷さんこそ大変ですよね。先生わがままだし。」

「わはは、そんなこと言えるのサキさんくらいですよ。」

「でも金谷さんがマネージャーするまでは何人も辞めてたんですよね?今落ち着いて先生が書くことができるのは、金谷さんのおかげだと思います。」

マネージャーさんは住み込みで働いている。みんな畑山のファンで希望して入ってくるが、彼の傍若無人さについていけなくなる。

「先生が新作を書くことができるようになったのも、サキさんのおかげだと思いますよ。文体が生き生きしている。」

「いや、先生は先生です。変わらないもの。」

心地良い車の振動に眠たくなる。
先生にとって私は数ある中のおもちゃだ。

そんなことを頭に浮かべながら、眠りに落ちてしまった…

ストーリーメニュー

TOPTOPへ