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雨の中の君へ。

第7章 月。

先生の小説では、私とタケルはハッピーエンドだ。外国で2人で事実婚。穏やかに幸せに過ごしている。


…現実はそううまくはいかない、んだよね。



「ほら、サキ!こぼしてる!」


「はいはーい。」


私は先生にお手拭きを渡す。
先生は小さな口にそれを当てた。

「ユヅキちゃん、もーママは適当ですねー」

「先生が過保護過ぎなんです!離乳食は手づかみオッケー!」


小説と全く異なる事実が目の前にある。

ユヅキと呼ばれる女の子。
…今月で一歳になる。

一回だけ、私はピルを飲み損ねた。…長野の夜。
誰が父親なのか?分からない。トモヤかもしれないし、先生かもしれない。金谷さんかも知れない。…そしてタケル、かもしれない。

先生はDNA検査をしろと言うけど…


私が母親なのは確かだ。
それだけが揺るぎのない真実。

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