天使で悪魔なセラピスト
第3章 最初の施術
すっと立ち上がった蓮が、ユナに右手を差し伸べた。
まるで精悍な騎士がお姫様にするように、慈しみ深くて優雅な仕草にユナはドキッとして彼を見上げた。
「おいで。少し診てあげる。」
え…
「今日は午後からは休診なんだけど、特別。」
そう言って少しいたずらっぽくウインクをした蓮の思いがけず可愛い仕草に、ぼんやりとなったままユナは思わずその手を取っていた。
そのまま、奥の扉の中へと導かれた。
診察室といっても、普通の病院みたいに医療器具はほとんどみあたらない。
どちらかといえば、お父さんの書斎みたいだ、とユナは思った。
真ん中に置かれた応接用のフカフカのソファに、ユナはフワリと座らされた。