天使で悪魔なセラピスト
第5章 始 ま り
思い切ってその扉を引いて中に入ると、ユナは「あ」と声を上げた。
先週は空っぽだった目の前の受付に人がいたから。
ユナより少し年上だろうか。
20代後半くらいの、豊かな巻き髪をした美人な女性が、丸い瞳でユナを見た。
「…あら、…ごめんなさい、今日の診察の受付はもう終わってしまったんですよ。」
その受付の女性は、顔ばかりでなく美しい声で優しくユナに言った。
「あ・・・」
予想しなかった展開にうろたえて、ユナが目を泳がすと。
受付ばかりでなく、待合にも、一人のサラリーマン風の男性と、それから中年の女性が座っていた。
どうやら、患者らしい。