天使で悪魔なセラピスト
第5章 始 ま り
「麗華さん。どうしました?」
聞き覚えのあるなめらかな低い声が、受付の奥から響いてきてユナはピクリと身構えた。
やがて誰かがやってくる気配がし、診察室へと続く扉からから顔をのぞかせたのは。
亜麻色の髪を揺らし、神秘的な琥珀の瞳をした、白衣の美青年。
瞬間、どきーん、とユナの心臓が飛び上がるように打ち付けた。
れん、先生…
黙ったままユナをとらえた蓮の顔が優しく微笑んだ。
「あの、この患者さん、先ほどいらしたんですが、午前の受付が終わってしまったと説明していたところで…」
受付の女性が蓮にそう説明すると。
「いいんだ。麗華さん。彼女を待たせてあげて。」
「えっ」
麗華と呼ばれた受付の女性は、怪訝そうに蓮を振り返った。
「…午後は彼女を診る約束だから。」