天使で悪魔なセラピスト
第5章 始 ま り
何だか落ち着かない。
待合の患者さんも、あの麗華さんという受付の人も、不審そうに私をみている気がして。…
ユナは待合の隅っこに座り、赤い顔をうつむかせたままじっと待った。
やがて二人の患者は、順に診察を終えて帰って行った。
すると。
かちゃりと奥の扉が開かれ、白衣を纏った蓮が姿を現した。
「待たせたね。ユナちゃん…さあ、診察してあげる。」
眩い笑顔で言われ、ユナははいと小さく返事をして立ち上がった。
そして。
「麗華さん。ご苦労様。今日はもう上がっていいから。」
蓮は、横の受付にいた麗華に優しくそう声をかけた。
「え、…」
すると、蓮がまた少し声を潜めて彼女に告げた。
「彼女は時間外診療だから、僕一人で。…わかるよね?」
麗華は一瞬ぎょっとしたように蓮を見てそして慌てるように言った。
「斉木先生。…まさか、あの診察を!?」
えっ。
あの診察?って?
一瞬、ユナは疑問に思い顔を上げ蓮をみた。
「…。」