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紅蓮の月~ゆめや~

第8章 第三話 【流星】 プロローグ

 そう、この女性は二十年前に見かけたあの美しい女主人の娘か何か―血縁に当たるひとに違いない。だから、同一人物かと錯覚するほど酷似しているのだ。何しろ、美都の記憶は二十年も前のものだし、当時五歳の幼児にすぎない。しかも、この店の主人を見たのもほんの一瞬、数えるほどの回数なのだ。そんな曖昧な記憶は当てにならない。
 同じような着物を着ているのだって、母親から娘が譲り受けたのだと思えば、納得がゆく。眼前の女性は二十年前に見た女主人に似ているけれど、もしかしたら、単に似ているだけで、そっくりそのまま瓜二つというわけではないかもしれない。
 それは、どう考えても美都が無理に自分にそう思い込ませようとして導き出した結論ではあったが―、とにかく、この女性は、美都の幼い日の記憶にあるあの美しい女主人と同一人物といって良いほど似通っていた。

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