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紅蓮の月~ゆめや~

第8章 第三話 【流星】 プロローグ

 英輔は広告代理店に勤務していて、浮気相手は同じ営業課の二つ下の後輩だという。英輔自身はあくまでも遊びだったらしいが、相手の女の子が本気で英輔に惚れ、自宅マンションまで休日に押し掛けてきたのだ。
 その日、英輔は家にいて琢己を抱いてあやしていた。美都は、ベランダで洗濯物を干していた。玄関のインターフォンが鳴り出てみると、青ざめた顔の若い女の子が立っていた。
―英輔さんと別れて下さい。
 彼女は泣きながら、その場に頽(くずお)れた。涙に潤んだ瞳はまだ幼ささえ残しており、一瞬、女心を弄ぶ英輔への怒りを憶えた。相手が良人の愛を仮に束の間といえども奪った相手だいうことも忘れていた。

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