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紅蓮の月~ゆめや~

第10章 第三話 【流星】 二

「良いのよ、それよりも、問題とは何?」
 美耶子が問うと、女房は声を潜めた。
「お殿様がこのお屋敷を出た次にお立ち寄りになられたのが、彼(か)のお方のお住まいだと―」
 女房の台詞は最後まで美耶子の耳に入らなかった。最早、何も考えられない。
 殿があの女の許に―?
 昨日、私と喧嘩をした後であの女に逢い、そして―。
 その続きに想いを巡らせて、美耶子は絶望的な気分になった。
 美耶子と逢ったその直後に、兼家は町小路の女を抱いたのだ! 美耶子とつまらぬ諍いをした、その憂さを晴らすために。

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