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紅蓮の月~ゆめや~

第10章 第三話 【流星】 二

 美耶子の眼裏(まなうら)にもつれ合う兼家と見知らぬ女の姿が浮かんだ。女は後ろ姿を見せているので、その表情は定かではない。仰のいた兼家の上に跨り大きく脚を開き、女はあられもない声を上げる。兼家が突き上げる度に、女は甘い悲鳴を洩らす。
 女が身体をのけぞらせると、背後で長い黒髪がまるで意思を持つ生き物のように大きくうねった。女の白い肌は兼家の入念な愛撫によって隈無(くまな)く色づかされ、兼家はそんな女をさも愛しげに恍惚と見上げる。
 美耶子は思わず固く眼を閉じ、己れの中に浮かんだおぞましい光景を追い払おうとした。兼家と町小路の女のあられもない淫らな痴態―。あの女は兼家に求められるままに自在に乱れて派手な痴態を演じて見せるのだろうか。

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