
紅蓮の月~ゆめや~
第10章 第三話 【流星】 二
それもすべては、美耶子が兼家を彼(か)の女に取られたと見苦しく嫉妬の焔を燃やしているせいなのだ。自分の中にこれほどまでに醜い感情が隠されていたことに、美耶子は大きな衝撃を受けていた。半年前、兼家と結ばれて以来、美耶子はそれまで想像もしたことがないような愛欲の渦に巻き込まれてしまった。 それは兼家という男を中心とした、限りなく大きな運命の渦だった。この果てなき渦の中で、これから美耶子はどうなってゆくのだろうか。考え始めれば、不安や心細さは尽きない。多分、好むと好まざるに拘わらず、美耶子は生涯、その大きな愛欲の渦の中でもがき苦しみ続けるのだろう。
兼家を独占したいと願いながらも、果たされることのない、けして報われることのない激しい愛の焔に身を焦がしながら。
兼家を独占したいと願いながらも、果たされることのない、けして報われることのない激しい愛の焔に身を焦がしながら。
