紅蓮の月~ゆめや~
第6章 第二話【紅蓮の花】 二
今宵の義経は常に比べて酒の回りがかなり早いように見えた。が、終始上機嫌で幾度も盃を口に運ぶ。流石に凛子が飲み過ぎではと案じるほどであった。
「殿、あまりにご酒をお過ごしになられましては、お身体にも障りましょう」
控えめにたしなめると、義経は笑った。
「最近、凛子は口うるさくなったのではないか。益々今西局(いまにしつぼね)に似てきたな」
今西局というのは、凛子の亡くなった母―つまり忠衡の乳母である。今西家の妻女であったことから、この名で呼ばれていた。今西家は秀衡の父祖の代から藤原氏に仕えた武門の家柄である。
「まあ、ひどい」
凛子がすねたように頬を膨らませて見せると、義経はさも愉快そうに声を上げて笑った。このような明るい義経を見るのは本当に久方ぶりのような気がして、凛子も嬉しくなった。
「殿、あまりにご酒をお過ごしになられましては、お身体にも障りましょう」
控えめにたしなめると、義経は笑った。
「最近、凛子は口うるさくなったのではないか。益々今西局(いまにしつぼね)に似てきたな」
今西局というのは、凛子の亡くなった母―つまり忠衡の乳母である。今西家の妻女であったことから、この名で呼ばれていた。今西家は秀衡の父祖の代から藤原氏に仕えた武門の家柄である。
「まあ、ひどい」
凛子がすねたように頬を膨らませて見せると、義経はさも愉快そうに声を上げて笑った。このような明るい義経を見るのは本当に久方ぶりのような気がして、凛子も嬉しくなった。