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紅蓮の月~ゆめや~

第6章 第二話【紅蓮の花】 二

 そして、昔から義経贔屓の次男忠衡と泰衡は真っ向から対立している。最近、鎌倉の頼朝は泰衡に義経の身柄を差し出すようにとしきりに催促してきていた。今は亡き父秀衡の遺言を守り義経を庇護しているけれど、泰衡がいつ何時頼朝に義経を引き渡す気にならないとも限らない。今日の忠衡の言によれば、いよいよ泰衡は動き始めたらしい。
 泰衡は秀衡が実の倅である己れよりも義経を可愛がっていたことが面白くなかったのだ。泰衡は次男忠衡と異なり、武芸にも秀でているわけでもなく、剛胆な性格でもなかった。小心な長男泰衡の気性を秀衡はかねてから藤原氏の棟梁には向いていないと公言してはばはらなかった。それどころか、むしろ義経のような天性の戦上手こそ、棟梁の器と誉めたたえていたのを泰衡は根に持っていたのだ。

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