
愛して、愛されて。
第8章 壊れる音
「離せよっ!兄さん!」
「できない。」
俺の叫びにきっぱりと答え、兄さんはスタスタと歩く。
ちらりと恭を見ると、兄さんの背中を痛いほど睨んでいた。
「、、、っ。」
やっぱり、俺のせいだ。
俺がいるから、こんな顔をさせてしまう。
小さく俯くと同時に、恭の声が聞こえた。
「奏太。俺はっ、、、!」
恭が何かいいかけた途中で、部屋の扉が閉まった。
廊下に、バタンという音が響く。
なにがなんだか、俺にはわからなくて。
恭が言いかけた言葉も、恭の行動も。
わからないまま俺は、なんの抵抗も出来ずに、
兄さんの部屋へ向かった。
なにも言わない兄さんの、表情すら見ることができないまま。
ただ黙って、兄さんに抱かれていた。
