
愛して、愛されて。
第8章 壊れる音
驚いた様に、恭が扉に目をやる。
もちろん俺も。
そこにはただ無表情な兄さんが、恭を痛いくらい見つめていて。
俺はハッとして起き上がった。
恭も静かに立ち上がり、兄さんを見つめていた。
ゆっくりと、長い脚を動かし近づく兄さんを恭は目を逸らさずに見つめていて、
俺だけが一人。
動揺していた。
「兄、さん」
やっとのことで言葉を発した俺に、兄さんは綺麗な笑顔を見せた。
「っ、、、」
まるで、恭なんていないように、兄さんは真っ直ぐ俺を見つめ、ゆっくりと近づく。
一瞬のことだった。
グイッっと引き寄せられた瞬間、床から足が離れた。
兄さんに抱き上げられたのだ。
「なっ!?」
恭は目を見開き、戸惑いの声を上げる。
それも全て聞こえないかのように、兄さんはゆっくりと扉に向かった。
俺を抱いたまま。
