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愛して、愛されて。

第9章 狂気の矛先







朝起きると、部屋には兄さんの姿はなくて。ただ、ベットから漂う兄さんの香りだけが、昨日のことは夢ではなく現実なのだと教えていた。


できれば夢であってほしかった。


夜中の出来事が鮮明に頭に浮かび、ハッとする。切なく歪む恭の顔が、俺の頭にキリキリと軋む痛みを与える。胸にも。


恭は、まだ寝てんのか?


ベットから起き上がり足を床につける。ギシリという音と共に立ち上がり、俺は兄さんの部屋を後にした。


恭がいるであろう俺の部屋へ向かう。


静まり返った廊下は、少しだけひんやりとした空気を纏っていて。俺の体は小さく震えた。


昨日の夜はあんなに楽しかったのに、どうしてこうなってしまうのだろう。

恭が泊まりに来てくれたことがとても楽しくて、すっかり兄さんの存在を忘れていたことに原因があることはわかってる。


だけど。だけどこんな簡単に、大切なものが遠のいていくなんて。


考えもしなかった。



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