愛して、愛されて。
第9章 狂気の矛先
いや、本当はわかってた。いくら手放したくなくても、離れたくなくても、俺にはずっと一緒にいることなんてはなっから無理だった。
いつかはバレてしまう気はしてたから、バレたくないと足掻いていた。どんなに苦しくても辛くても、恭さえいてくれれば我慢できるのだと自分に言い聞かせてきた。
だから、恭には話さなかったしこれふからも話すつもりはなかったのに。
こんなにもあっさりバレてしまうなんて、唇から乾いた笑いが漏れる。
扉の前でピタリと止まり、ドアノブへと手を伸ばした。
その腕が情けなく震えていて、俺は堪らず舌打ちをしてしまう。
ああ。ほんとに弱いな、俺。
だって怖くて仕方がない。この扉の先で、恭はどんな顔で寝ているのだろうか。もしかしたら起きていて、俺に軽蔑の目を向けるかもしれない。
そう考えると、なかなかドアノブを回すことができなかった。
昨日のされた行為に、怒りも憎悪もない。ただ、拒絶されたらどうしようという不安が、俺の体をかけ巡っているだけだった。