愛して、愛されて。
第4章 酷く冷たい優しさ
――ヒッ、ああああ゛
頭の中に、俺の喘ぎ声がこだまする。
ああ、腕が足りない。
腕があと2本、足りないんだ。
視界だけじゃない、耳も塞ぎたい。
もう何も見たくない、聞きたくない。
自分の喘ぎ声なんて、聞きたくない。
「あ…ああ、っ…恭…」
恭の名前を呼んだ。
恭に、会いたい。あの笑顔を見たい。話したい。
――手当、しようか。
「…っ…―」
兄さんの声が、響く喘ぎ声と重なった。
ズルズルとしゃがみ込み、膝を抱えて目をつぶった。
やめろ、やめろよ。
やめてくれ。
もう、何も考えたくない。
兄さんが、わからないんだ。
切なく、俺を呼ぶな。
優しく、すんなよ。
――惑わすなよ、兄さん。
目から流れる涙に気付かない振りをして、
「助けろよ、恭…」
恭の名前を、もう一度呟いた…―