愛して、愛されて。
第4章 酷く冷たい優しさ
「…いい。別に、いらない。」
手当なんて必要ない。
バッと振り払うと、思ったほど簡単に兄さんの手は離れた。
兄さんの表情を見ずに、ただ俯いた。
「兄さん、仕事だろ。」
なんでも良かった。
この状況を切り抜けることができるなら、なんでもいい。
兄さんから、今すぐ離れたい。
じゃないと、頭が壊れそうだ。
頭だけじゃない。
心臓まで、壊れてしまいそうだ。
「…………」
何も言わない兄さん。
知らない振りをして、ただ無我夢中で走った。
リビングの出口まで、走る程距離があるわけじゃない。
だけど、そんなの関係ない。
俺は早く、兄さんから離れたいんだ。
調度いいことに、時間は兄さんの仕事の時間。
何の仕事をしてんのかは知らないけど、兄さんが仕事に行くのはいつも夕方だから。
―――バタン。
扉を閉めて、階段を駆け上がる。
そして、自分の部屋に閉じこもった。
目の前に、兄さんとの行為をしたベットがあって、
「…っ…―」
両手で視界を遮った。