愛して、愛されて。
第5章 守りたいもの
仕方なく、奴の前に水の入ったコップを置いてやった。
カランと揺れる氷を見ながら、雄飛はクスリと笑う。
キーを回すのをやめ、頬杖をつく奴は、俺の目を真っ直ぐ見つめ、こう言った。
「ああ、そういえばさ。
奏太君、色っぽいじゃないか。」
“興奮したよ”
クッと喉を鳴らし、うっとりとした表情で言った雄飛に、俺は目を見開いた。
「……ふざけてる?」
「まさか。ふざけてるわけないじゃないか。」
「ふざけてるだろ。」
間も入れず、声にドスを効かせた。
まるで、俺を挑発するような雄飛。
酷い顔をしているであろう俺を、雄飛はクスクスと笑って見つめていた。
俺の焦りや怒りを、嘲笑うかのように。
一瞬で無くなりそうになった正常な意識を、しっかりとつなぎ止め、
無理矢理冷静さを取り戻す。
ここで取り乱すわけにはいかない。
奴の思い通りになるから。