愛して、愛されて。
第5章 守りたいもの
「…お前が来るの、珍しい」
なにか企んでるのか?
疑いの目を向けると、奴はへらりと微笑み、
俺の目の前の椅子へと腰を下ろす。
そして、
「んー、なにかカクテル作ってくれないかい?」
そう、話しを逸らした。
なんだ、コイツ。
なにがしたい?
小さく睨みを効かせながらも、
「断るよ。」
そう返してやった。
「フフフ、秦。客は大事に扱うものだろう?」
「客じゃなだろ。第一、店はもう閉めたんだから。
作ってほしけりゃ、もう少し早く来なよ」
はぁ、とため息をついて、またグラスを拭く手を早めた。
そんな俺を見て、雄飛はまたへらへらと笑った。
―――ここは、俺が経営している小さなBAR。
目の前の雄飛も、俺と同じくBARを経営している。
ただ違うのは、俺のBARは夜専門で、
雄飛のBARは、昼間は珈琲屋として売り出しているということ。
俺のBARに雄飛が来ることなど、滅多にない。
あるとしたら、よっぽど何かがあった時だろう。
陽気に鼻歌を歌い、車のキーを指でクルクル回す雄飛。
この様子じゃ、帰る気配もないな。
と、俺は深いため息を落とした。