
愛して、愛されて。
第6章 狂気の陰
「伊勢谷センセ…?」
「ああ。」
教科書を片手に、俺の机に手を着いている伊勢谷先生。
その目は、俺を真っ直ぐ見つめていた。
寝ていたのがばれたのか、周りからはクスクスと笑い声が沸き上がる。
ただ恭だけが、気付かずに寝ていた。
「俺の授業は、眠いかな?村尾。」
「へっ!?あ、いえ…」
ニコニコと俺を見下ろした伊勢谷先生に、慌てて首を振る。
ただ一つ、違和感を感じた。
なんだ、この違和感。
伊勢谷先生が纏う雰囲気が、最近なぜか不気味に感じる。
放課後の廊下で会った、あの日から。
もう一度伊勢谷先生を見上げる。
そして、息を呑んだ。
「居眠りなんて、お仕置きだね。」
「…っ…―」
伊勢谷先生の顔が、思ったよりも目の前にあって、
そんなことを、耳元で囁かれたから…―
