背中デ愛ヲ、囁キナサイ
第2章 月明カリノ下デ
仰向けになった彼に腕枕をされていながら、更に続く深い沈黙が耳に障る。
彼の腕に流れる血液の振動を耳に感じていると、自分の掴んでいる胸元からほんのわずかに発する血のにおいが鼻を刺激した。
嗅ぎなれたにおい。
彼と離れれば、もう嗅ぐ必要もないのかもしれないけれど……
ぼーっとそんなことを考えていたら、彼が大きくひとつ、息をはいた。
何か、話してくれるの?
そう思って彼の優しい声を待とうとした瞬間、彼は横向きになっていたわたしの肩を強い力で押し込み、無言で仰向けにさせた。
どうしたの?
真っ暗で彼が見えず、この力の強さにいたたまれなくなった。