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背中デ愛ヲ、囁キナサイ

第2章 月明カリノ下デ


 何度目だろうか、こんな空気を味わうのは。

 きっと今日で、この人とは終わってしまう。

 そう思って、体からすべて力が抜けてしまった、その瞬間、締め切っていたカーテンが開けられて眩しい程の月の光が目に入ってきた。

 いつの間にか溜まっていたらしい涙が、瞬きと共に横に流れて落ちていった。


 馬鹿みたい。
 
 泣いたところで、何も変わりはしないのに……

 虚しさで危うく湧き出そうになる涙を照らされたくなくて、月の光から顔を背けると、ゆっくり静かに、彼の手が私の右の胸元に触れてきた。

 今まで誰にも気付かれることのなかった、その汚い傷跡に添えられた大きな手は、

 とっても温かくて、
 とっても優しくて、
 とっても痛かった。

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