背中デ愛ヲ、囁キナサイ
第2章 月明カリノ下デ
「たすく? 聞いてくれる?」
いつにも増してしゃがれた声は小さく儚い音量で、柔らかい月明かりの入る部屋に漂っていたけれど、沈黙の続いた夜更け、彼の耳に届くには十分だったようだ。
“助けて”――そんな気持ちも混じった声になってしまったのか、ドアを背に立ちすくむ彼のわたしへの眼差しは、慈しみを帯びていた。
初めてだった。
自分の恋の話を誰かに聞いてもらうのは……
大恋愛なんかでもなんでもなく、ありきたりな過ちを忘れられないわたしの恋を、とにかく、彼にすべて知ってほしくて、“初めて”の話から切り出した。