背中デ愛ヲ、囁キナサイ
第2章 月明カリノ下デ
そして20歳で出会ったのはあの人。
強くて優しくて穏やかで、わたしの理想そのものだった。
既婚者だということを除いては。
あの人は、わたしが嫌だと思っていた交わりさえも、幾度も欲したくなるものへとサラリと変えてしまった。
わたしを抱きしめる力加減や、愛撫する指先、果てる時のため息まで、あの人の温もりが感じられたかのようで、女でよかったとも思えた。
できることなら、
ずっとこのまま……
そんな想いも募っていたあの夜、ようやくわたしは気付かされた。