背中デ愛ヲ、囁キナサイ
第2章 月明カリノ下デ
強さだと思ったのは、不倫を荒立てないようにするための取り繕いで、
優しさだと思ったのは、妻がいることを悟られないための嘘で、
穏やかさだと思ったのは、曲がりなりにも家族になった人達に対する後ろめたさだったということに。
その時が来るまで、彼は結婚していた事実を伝えてくれなかった。
わたしがこれ以上ないくらい惹かれてしまっていることを知りながら。
『気付かないお前も悪いんじゃない?』
確かにそうだったのかもしれない。
でも、あの人がわたしを欺いたという事実に変わりはない……